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2010年に刊行された貫井徳郎の「灰色の虹」『冤罪』と『復讐』が生んだもの

2018/10/01
 
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2010年に刊行された貫井徳郎の「灰色の虹」を読んだのだが、重いテーマを扱い、ページ数も700ページを超える長編にも関わらず最後まで一気に読み進めてしまいました。

 

この作品のテーマは「冤罪」と「復讐」です。

 

顔に大きな痣があり、それに大きなコンプレックスを感じている江木雅史。

 

その痣のせいもあり、自分に自信が持てず内気な性格である江木だが、人生で初めてできた恋人や、仲のいい家族に囲まれて、平凡だが幸せな毎日を送っていた。

 

しかし、見に覚えのない殺人事件の容疑者として警察に連行されたその日から、彼の人生は一変し、崩壊へと向かっていきます。

 

刑事、検事、弁護士、裁判官、誰からも信じてもらえなかった江木は、無実の罪で刑に服し、それにより江木は家族や恋人、社会的立場、生きる意味、すべてを奪われてしまいます。

 

絶望し、自ら命を絶とうとするも、唯一自分を信じてくれた母親に助けられ、死ぬことすらできない江木は、自らを絶望の淵に陥れた者たちへの復讐を決意します。

 

冤罪が出来上がっていく様が実にリアルで、恐ろしかったです。

 

しかもやるせないのは、冤罪を作り上げた者たちが根っからの悪人ではないことです。

 

むしろ、彼らは善人である。

 

彼らには彼らの正義があり、その正義に則って己の信念を貫いたのです。

 

しかし、江木の人生を壊したのも間違いなく正義を貫いた刑事、検事、弁護士、裁判官でした。

 

彼らのやり方やミスがなければ、江木はこれからも平凡に暮らせていたはずなのです。

 

誰からも信じてもらえず、それでも最高裁まで戦い、無実の罪で刑務所に服役した江木の悲痛な叫びに、心が押し潰されそうでした。

 

出所した彼に待っていたのはすべてが崩壊し、敵しか存在しない世界でしだ。

 

自らも最悪の汚名を着せられるだけでなく、大切な者たちをも不幸の道に連れ込んでしまった江木は一体どんな思いであっただろうか。

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父親を自殺させたのも、姉の婚約を破談させたのも、母親を住み慣れた土地から離れひっそりと暮らさざるを得なくさせてしまったのも自分だと江木は責めるが、そもそもきちんとした捜査が行われ、江木の言葉を刑事たちが聞いてくれていればこの不幸は起きなかったのです。

 

なぜ江木がここまで苦しまなくてはならないのだろうか。

 

作中で彼の母親は何度も言う。

 

「あの子が一体なにをしたというの」と。

 

本当にそうだ。

 

江木はこのような人生をなぜ歩まされなくてはならなかったのだろうか。

 

江木や江木の母親の悔しさが痛いほど伝わってきます。

 

そうして江木は復讐を決意し、一人ずつ殺害していきます。

 

彼の思いを知れば、仕方のないことだと思えてしまうのだが、それでもやはり「復讐」が正しいことだとは私は思えません。

 

作中で江木を追う刑事・山名も同じ思いで、だからこそ私は山名に江木を止めてほしかったのです。

 

復讐は、悲しみしか生まない。

 

作中では「悪」として映る者たちは、本来は決して悪ではないし、彼らにも彼らの歩んできた人生があり、愛する家族がおり、日々の生活があります。

 

そこは江木と何ら変わりはないのです。

 

江木は復讐をしてなにを得たかったのでしょうか。

 

もしかしたら、もう誰かに信じてもらいたいという気持ちはなかったのかもしれません。

 

死ぬことすらできなくなった江木には復讐しか残されていなかったのかもしれません。

 

そこまで人を追い込んでしまった「冤罪」は悲しいことだが現実社会に存在します。

 

そしてそれは誰の身にも起こりうるなことです。

 

それを今作を読んで痛感しました。

 

最初から最後まで悲しく、やるせなく、理不尽なことに怒りも覚えました。

 

だからこそ、終章は涙が止まらなかったです。

 

恋人との幸せな未来を思い描き、微笑みながら空に浮かぶ虹を眺める彼に、どうして神は残酷すぎる未来を与えたのでしょうか。

 

もう二度と、江木は七色に輝く虹を見ることはできないです。

 

江木の意思を継いだ母親も同じです。

 

彼女が見る虹は、二度と輝かないだろうと思います。

 

この世界に灰色の虹を見ている人間がどれだけいるのでしょうか。

 

願わくば、すべての人に虹は七色に輝いていてほしいです。

 

 

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