『スタンドバイミー』少年を経て大人になることを教えられた名画

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『スタンド・バイ・ミー』とは?
名曲の方を思い浮かべる方多いでしょう。
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目を瞑ればお馴染みとメロデイと歌詞が自然と口ずさめるような名曲ですが。
映画の中でも使用されている楽曲ですが、そのテーマに十分応えらえる名画でもあるのです。
この映画の原作は高名なホラー作家の短編小説に由来します。
怪奇な描写を得意とする彼の作品だけあって、映画の中でもその卓越した手法が発揮される場面もあります。
けれども、アメリカの山間部の片田舎で起こった、少年の行方不明事件という、小さくて退屈な町を騒がす事件は興味深い物だった筈です。
事実、精一杯背伸びをして大人への第一歩を進むのを躊躇しながら日々を過ごしている少年達にとっては自分達の存在を世に知らしめる絶好な機会だったのです。
なぜなら、少年の遺体探しというとんでもない冒険に出ようとしたのですから。
彼らの境遇は恵まれてはいません。
それこそ道を踏み外せば、人生の落伍者になりかねない境遇に近いとさえ言えるのですが。
周囲に黙って信用の置けない怪情報をひたすら信じて、冒険に出ようとする彼らの勇気は本物だと思いました。
けれども、現実は非力な非力な彼らに容赦無く襲い掛かります。
その都度お互いを励ましながら困難に立ち向かうのですが、一人ではとてもこんな無謀な蛮行は行えなかったでしょう。
僕らには仲間が居るんだ、という大人から見たら甘ったるい相互依存も、彼らの間では血肉を分けた家族よりも絆は深かったはずです。
私はずっと後にこう思いました。
彼らは友人の姿を借りて、自分自身の姿を見ていたのだと。
迫りくる機関車に対して、誰が一番最後まで線路の上に残って居られるか?
という一歩間違えば自殺スレスレの行為も、自分に似た仲間の影を見て、無力で怯懦な自己に対する嫌悪感から生まれる怒りのような物を感じていたのではないでしょうか。
最終的に彼らは目的を達しますが、死体を発見したらどうするという現実的な思考にまでは及びませんでした。
言うなれば冒険のための冒険、だったということかも。
不良達との対決も、単なる脅しの手段だった拳銃を発砲したことで、彼らは気づきました。
意味の薄い冒険だったことに。
そして遠いはずだった死という現実と、道を踏み外せば人生を台無しにしかねないという厳しい現実にも。
家族が待っている町へ彼らは辿り着きます。
しかし、現実にお互いを親しい友人として行動することはもうありませんでした。
成人への通過儀礼と言えばそれまででしたが、成人してその時の仲間の一人が不慮の事故で命を落としたという新聞記事を目にした主人公の回顧は、生涯であれ以上親しかった友人達は居なかったと結論付けます。
ホラー作家の恐らく現実に近い物語を見事に演じてくれた少年達(一人は若くしてこの世を去りました)の熱演が忘れられない、心に残る映画です。